MSR Internship アルムナイ Advent Calendar 2020: 5日目

デンソーアイティーラボラトリの欅と申します.Microsoft Research Internship アルムナイ Advent Calendar 2020 5 日目を担当させて頂きます発起人の樋口さんにお誘い頂いて気軽に登録したらその後研の高い研究者がどんどん登録されて場違い感に恐れ慄いていますが,粛々とお話していきたいと思います!!

目次

  • はじめての NLP:応募の経緯

  • MSRA での研究と生活:MSRA 体験談

  • (おまけ) MSR/MSRA ブログの真相

はじめての NLP

自分がインターンしていたのは平木さんと同じく中国・北京にある研究所である Microsoft Research Asia (MSRA) でした.期間が D3 (2013 年) の 8-11 月だったので知り合いからは「なぜこのタイミング?」という反応を頂きつつも,軽い気持ちで行きました.確かに D1 か D2 で行けば (期間延長含めて) もう少しじっくり取り組めたかなとは思いましたが,別の時期だと同時期のインターン生たちとも知り合ってなかったと思うので,その点であの時期でよかったと思っています.

同時期の日本人インターン生の皆様方:左から,HCI 分野の蜂須拓くん,欅 (私),CV 分野の松井勇佑くん,NLP 分野の山本風人くん,CV 分野の山浦佑介くん

応募のきっかけについて.当時在籍していた奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST) で MSRA のイベントがあり,そこで MSRA のことを聞いたり,その後メンターとなって頂く荒瀬さん (現大阪大学) とも面識を持ちました.指導教員からも海外留学かインターンしてきたらと提案頂いていたこともあり,MSRA に行って研究したいと思うようになりました.その後,平井さんと同様に自分も Ph.D. Fellowship に応募して落選してしまったのですが,それでも MSRA で研究したいという気持ちが強かったので,荒瀬さんに直接応募させて頂きました.

ちなみに,荒瀬さんのご専門は自然言語処理 (NLP) なのに対して,自分は学部からずっとデータベース (DB) コミュニティで情報検索 (IR) の研究に取り組んでいました (情報検索は国内だと図書館情報学,DB,NLP といった複数のコミュニティで取り組まれています.複数のコミュニティに所属している研究者はいらっしゃいますが,コミュニティごとに目標やアプローチは異なる印象です).IR と NLP は密接に関わるというのは多くの IR 研究者の共有認識だと思うものの,当時の自分は NLP 技術を全然知りませんでした.IR 的アプローチでの精度改善や DB 的アプローチでの高速化に取り組んでいたものの頭打ちになっていて,別の方向の興味を模索していていました.そんなときに国内屈指の NLP 拠点であった松本研で助教をされていた小町先生や博士論文の副査もして頂いた松本先生から NLP の観点でコメントやアドバイスを頂いているうちに,本腰を入れて NLP を勉強したいと思うようになりました.

このような経緯で荒瀬さんに直接応募したものの実績のない自分を受け入れて頂ける可能性はかなり低かったのではないかと思われますが,幸運にも MSRA で研究できることになりました.恐らくは当時荒瀬さんの同僚であった酒井先生 (現早稲田大学) や MSRA University Relations の公野さんからお力添え頂いたのかなとは思っていて,そういう意味では自分はコネネットワークルートだったのかと思っています.現在公野さんの後継として鎌倉さんが担当されているので,MSRA へのインターンに興味がある人は是非コンタクトしましょう!! (直接コンタクト取りづらい方は私から紹介させて頂きます!)

応募やその後の準備についてはいろいろと参考となる記事はあるのでいろいろ参考にされるのがよいと思いますが,もしよければ以前学会に寄稿した「海外インターンシップに行くために必要な10のこと」もご参照ください.

MSRA での研究と生活

MSRA では Natural Language Computing (NLC) Group に所属して,ミーティングとして 1. 荒瀬さんとの個別ミーティング,2. チームミーティング,3. グループミーティングに参加していました.荒瀬さんからは一から NLP のことを教えて頂いて,建設的かつ実用的なコメントをたくさん頂きました.MSRA チェックアウト時には研究に取り組む姿勢やプレゼンテーションについてのフィードバックも頂き,客観的なコメントはとても勉強になりました.残念ながら研究成果が出ないうちにインターン期間が終わってしまったのですが帰国後も継続してミーティング頂いたり,荒瀬さんには本当に感謝してもしきれません.

また,チームミーティングでは辻井先生 (現産総研人工知能研究センター所長) や,自分と同じく荒瀬さんのメンティーである山本くんからもたくさんコメントを頂きました.個別・チームミーティングでは日本語で深い議論をしつつ,グループミーティングでは英語でのミーティングの経験を積むことができて,非常に貴重な経験ができました.あとは著名な研究者を招いたトークが頻繁に開催されていたので,少し分野が外れていても積極的に参加しました.MSRA のインターン生たちはみんな優秀かつハードワーカーなうえに著名な研究者のトークも聞く機会も多く,自分もモチベーションも爆上がりでした.

MSRA では原則グループごとに座席が近くなるように配置されるのですが,自分は空き席がなくて別フロアを割り当てられたので同じグループのインターン生がいませんでした.ただし近くの座席のインターン生からご飯や遊びに誘ってもらったりと親切にしてもらいました.銀行口座を開設するのについてきてもらったり,通販サイトで買い物をするのを手伝ってもらったりも非常にありがたかったです.あと,研究室助教と電話したらその後に「日本人なの?」と話しかけられて,中国の若い人の中には日本の文化に興味のある人が多いらしく日本のアニメの話をしてきてくれたり「日本語を話して・教えて」と頼まれることもあり,とても驚きました.「せやかて工藤」と言ったらはしゃいでもらえるという稀有な経験をしました

絶対に自分ひとりでは辿り着けなかったであろう万里の長城.あいにくの曇りでしたが良い気分転換になりました!

ルームメイトの所属が HCI グループで,彼を通じてもいろんな人を紹介してもらいました (インターン生の比率はやはり中国人が多いのですが,HCI グループは最もインターナショナルだった気がします).そこで蜂須くんと知り合って親しくなって,インターン期間の後半になってからですが金曜日の夜は日本人インターン (冒頭の写真のメンバー) で集まって五道口という飲み屋街に出かけて研究や各自のコミュニティ,進路について語り合うのが習慣になっていました.自分にとって彼らとの語らいもかけがいのない思い出になっています.各自の分野がバラバラだったので MSRA だからこそ知り合いになれたのだと思いますし,帰国後もたまに同期会をしていました (COVID-19 が落ち着けば再開したい)

HCI グループの皆様方

中華料理はとても美味しくバラエティもあって飽きないですが,たまに食べる日本食はとても美味しく感じました!

五道口にはヨーロッパスタイルのバーや日本風居酒屋もありました

日本人といえば,自分が滞在していた時期は日本人研究者の方も多くいらっしゃいました.そのおかげで日本人が応募しやすかったのかなとも思います.

自分の「北京ダックが食べたい!」という我儘に付き合って頂いた日本人研究者・インターンの皆様方

恩人であり大尊敬する酒井先生

短い期間だったので週末もほとんどオフィスで作業していたのですが,気分転換のため多少は観光にも行きました.普段のホテルとオフィスの往復では知ることのできない中国の文化にも触れることができました.また,中国人は他人に非常に親切だと感じる機会も多く,バス停やスーパーマーケットで中国語を読めずに困っていたら見知らぬ人が話しかけてくれて助けて頂いたこともたくさんありました.バスや地下鉄では率先してお年寄りに席を譲るところも見習うところだなと思いました.日本のニュースでは伝わらない中国人を知ることができたのも MSRA インターンのおかげです.

映画「ラスト・エンペラー」を予習してから訪問した紫禁城 (故宮)

頤和園のラバーダック

まだまだ MSRA の魅力は語り尽くせてしませんが,自分にとって MSRA インターンはめちゃくちゃ楽しくて得難い経験だったので,興味のある人は気軽にアクションを起こすのを強くお勧めします!!

(おまけ) MSR/MSRA ブログの真相

最後におまけです.当時はよくMSR/MSRA のブログでインターン生の体験記が掲載されていました.もう時効かなとは思うので経緯を話そうと思うのですが,自分の記事はこれです.掲載されたときは少し話題になり,大体がやらかしたなという反応 (「公式ブログでこれ怒られないの?」というコメントなど) でした...この件については当時 SNS 上で全く反応していなかったのですが,実は公野さんから「面白い記事」という注文を頂いていて,(今ならもっと別のアプローチを講じられたとは思うのですが) 試行錯誤の結果,当時の自分にはこういう話題の取り方しかできなかった次第で反省しています...この件では面白く思って頂けた方もいらっしゃいましたが,不謹慎だと思われた方や,この記事を見て本気に思った人の不評を買ったり本当に紹介してくれようとしてくれたり,とにかく迷惑もおかけしたので,この場をお借りして謝罪をさせて頂きます.